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東京高等裁判所 昭和43年(行ケ)75号 判決

以上の争いのない事実によれば、本件審決は違法であるから取消を免れない。よつて原告の本訴請求は正当であるから認容する。

〔編註〕 本件における事実関係は左のとおりである。

一 原告は主文同旨の判決を求め、請求原因として次のとおり述べた。

(一) 特許庁における手続の経緯

原告は、昭和三五年八月一一日特許庁に対し、名称を「機械時計の機構部分を利用した摩擦試験装置」とする発明につき特許出願をしたが、同三九年三月一六日拒絶査定を受けた。そこで原告は同年五月四日審判の請求をし、同年審判第二一一五号事件として審理されたが、同四三年三月三〇日「本件審判の請求は成り立たない。」旨の審決があり、その謄本は、同年五月一八日原告に送達された。

(二) 本願発明の要旨

機械時計の機構部分と連動することにより回転を与える試験油用軸を装入する軸受部分に別個に恒温槽をとりつけ、機械時計の振り子、テンプ輪等の振巾測定用目盛板を適合位置に組つけ、該機械時計部分を回転せしむる電動機と前記電動機の入力電流の電位差又は電力差に応動して該装置を回転する場合における摩擦抵抗力の大きさを指示する装置とを組合すように接続した機械時計の機構部分を利用した摩擦試験装置

(三) 審決理由の要点

本願発明の要旨は前項のとおりである。

ところで原告は、本願発明において時計機構を用いることによつて時計潤滑技術の不充分を時計製造技術の不充分と誤解するおそれをなからしめる独自の効果を奏しうると主張しているけれども、本願発明と同様に振子を利用する潤滑剤の試験装置は、たとえばT型振子摩擦試験機として従来普通に知られているところであつて、潤滑剤自体の性能を明らかにすることが可能である以上、特に時計用潤滑剤を設置する部材を本願発明のように時計としても前記のような効果は格別顕著なものとは認めがたい。更に時計の駆動手段として電動機を用いること、被試験体たる潤滑剤の部分に恒温槽を配することなどはいずれも時計並びに潤滑剤の性能試験の場合における常套的技術にすぎず、これらの点に発明を認めることができない。

結局本願発明は以上の周知技術から当業者が必要に応じて容易にできるものと認められるから、特許法二九条二項により特許を受けることができない。

(四) 審決を取消すべき事由

審決は、振子を利用する潤滑剤の試験装置は例えばT型振子摩擦試験機として、従来普通に知られていることを主たる根拠として、本願発明を当業者が容易になし得るとしているが、拒絶査定では、このような理由は何ら示されていない。このように審決は拒絶理由と異る新たな理由をもつて本件特許出願を排斥したにもかかわらず、審判官は出願人たる原告に意見書提出の機会を全く与えていない。したがつて審決は特許法一五九条二項により準用される同法五〇条に違背したものであるから違法であり取消されなければならない。

二 被告は、「原告の請求を棄却する。訴訟費用は原告の負担とする。」との判決を求め、原告主張の請求原因事実を認めると述べた。

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